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団長ごあいさつ


ボランティア・オーケストラ「杉谷の森合奏団」のあゆみ

団長: 廣田 弘毅(富山大学麻酔科診療教授)

 先日,附属病院入院中の患者さんから1通の投書を頂いた.
「杉谷の森合奏団の病院コンサートがよかった.涙が止まらなかった.」
という文面であった. 現代の医療とはインフォームドコンセントと医療事故防止マニュアルであり, 医は仁術というよりは契約で,いささか殺伐となりつつあるが, 患者さんから上記のような御感想を頂くとこちらも涙が出る程うれしい. 病院コンサートを続けてきて本当によかったと感激した.

 話は20年前に遡る. 私がまだ本学の学生で,室内合奏団(現・管弦楽団)の団長だった頃である. 団員の中から「附属病院で患者さんのためにクラシックの演奏会を企画したらどうか」 という声があがるようになった. 自分達のサークル活動をボランティアとして役立てられたらと考えたのである. しかしその頃,病院に「アメニティ」という概念はまだなく, 院内にBGMを流すかどうかで物議をかもした時代であった. 「病院で生演奏など,とんでもない!」と病院側には相手にもしてもらえなかった.

 その後,音楽や文化的活動に御理解の深かった佐々学元学長の御口添えや,現同窓会長の高田良久先生, 皮膚科助教授(当時)丸山友裕先生,第三内科(当時)土田敏博先生などの御尽力もあって, 1991年7月になってようやく「杉谷の森合奏団第1回病院コンサート」が実現した. 当時は「病院コンサート」という言葉すら珍しく, 新聞やテレビなどで大々的に取り上げられたものだった.

 その後杉谷の森合奏団は,同窓生・大学関係者を中心に年1〜2回の「病院コンサート」を地道に続け, 2003年度には附属病院長より感謝状を頂くまでに成長した. 附属病院に留まらず,厚生連糸魚川総合病院や西能病院へ遠征したこともあった.

 第11回からは,医学部同窓会からの協賛が頂けるようになった. メンバーの中には関東や関西に在住する団員もいるが, 彼らはこのコンサートのために夏休みを返上し,自費で遠路遥々やって来る. そこで遠隔地の団員には,協賛金から旅費を支給しようと提案したが, 本人達は「旅費はいらない.杉谷の森合奏団のために残る物に使ってほしい.」と言う. 団長としては頭が下がる思いである.団員と話し合った結果, クラシックの楽譜を揃えて「杉谷の森ライブラリー」を立ち上げることにした.

 本学の管弦楽団も多くの楽譜を持っているが,ほとんどが交響曲や管弦楽曲などオーケストラのものである. 杉谷の森ライブラリーでは,室内楽を中心に楽譜を揃え,管弦楽団や同窓会会員にも貸し出せるシステムとすれば, 微力ながらも大学や同窓会に還元できるのではないかと考えている.

 往年の大指揮者フルトベングラーは「真の音楽は,時としてアマチュア演奏家によって成し遂げられる」と言った. プロの奏者は生活のために演奏するが,アマチュアは損得抜きで音楽の歓びだけを目的に演奏するからである. 冒頭のような投書が頂けるということは,ひょっとすると,僅かながらも「真の音楽」が達成できたのかもしれない. そう信じながら,今後も末永く病院コンサートを継続してゆきたいと思う.



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